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久々の。
高土が携帯もったらこうなる、って話。

今回はシンスケくん編からです。





残念です。



ずっとどうしようかと思っていたのだ。
もし、自分がどうしても出られない時に、土方に何かがあって、そうして、自分に助けを求めてきたら。

ずっとそれが怖かった。

 


シークレット・マイハニー4

 


『来島また子っす。タダイマ電話に出られないっす。もしかして晋助さまっすか!?だったら今すぐ掛け直すっす!気付かなくて申し訳ないっす!――晋助さま以外なら適当に伝言を残しておくと良いっす。ピーという発信音が流れる筈っすから、そこに伝言をいれるっす」

耳元で流れた、抑揚の無いピー、という電子音に、高杉は一瞬ひたり、と固まった。
何だ、コレ。

来島に電話をかけて出なかった事が無いから、その声で最初は、いつも通りに話しかけたのだ。数日後に行われる、小さな天人襲撃の計画の、事だ。
一方的に話して、電子音を残して来島の声は消えた。

一度携帯を耳から離して、もう一度、そっとあてる。受話器の向こうはシン、と静まったままで。
唐突に、ぴぴ、と二度電子音が鳴って、通話は途切れた。

 

後で聞くと、留守番電話、というらしい。かけても相手が出なかったときに、メッセージを残しておく為のものだという。それ自体は高杉も知ってはいたのだけれど、受話器の向こうは、何時も機械的に喋る「留守番電話サービス」の声なものだから。

「何でお前が喋ってんだよ」
そう来島に問い詰めると、当たり前のような顔をして、部下は小さく笑った。
「録音できるんっすよ。自分の声で、留守電できるんっす」
そうして、来島は高杉の携帯を幾度か操作して、録音画面を呼び出した。整えられた爪がボタンの上を飛び回るのに、つい最近メールで絵文字が使えるようになったばかりの高杉は、どうにも着いていけずに。
あとで、手順を書いてもらうべきか、と。僅かに思案している間に、来島はひょい、と画面を高杉に向かって差し出した。

「これで、あとは三十秒、声を入れて登録するだけっす!晋助さまに電話したら、出られなくても、何時でも晋助さまの声が聞けるっすね!」

そんな風に来島が言うものだから。
ああそうか、そう、使うのかと。

高杉の意識は、既に京には無く。遠く江戸の町で、きっと今頃自分達を捕まえようと躍起になっている、男に向けられている。

もし、土方に何かがあって。自分の声が聞きたい、なんて。そう思う事だってあるに違いないのだ。勿論肌身離さず、着信メロディに設定してある、「愛してるぜ、シンスケ」という声が一度流れ終わるまでには、出るつもりだ。


「愛してるぜ、シンスケ」を録音するのにも、紆余曲折色々あった。この一言の為に、半月前から準備に準備を重ね、良い酒を用意し、非番の日を調べて、高杉は江戸へ向かったのだ。
その日は、近藤絡みの、何かの祝い事であったらしい。気には食わないのだが、土方の機嫌が珍しく、酷く良かったので、屯所は襲わずにおいてやろうと決めた。我ながら寛大だったと、高杉は小さく笑みを浮かべた。

その後、私宅に戻って来た土方は、いつも通り勝手に入りこんでいる高杉を見ても、何も言わないどころか、一緒に飲むか、とまで言い出したのだ。高杉の持ってきた酒だけではなく、土方の家に買い置きしてあったビールや酒の缶を全て開けての、二人だけの大宴会だった。

「幸せだったなァ……」
何時もは怒ってばかりの土方が、酔いに任せて、自分に向かって笑うのだ。舌足らずに、たかすぎ、と呼ばれて、危なく色々出るところだった。

愛してるって言ってみろよ、なんて。半分寝ぼけた土方の耳元で囁いて。あらかじめ録音スイッチを入れておいた携帯を差し出せば、「愛してる、シンスケ」と。何かの遊びのような気軽さで、土方はそう言ったのだ。
幸せすぎて死ぬかと思った。
危うく泣きそうになって、高杉は、今の録音を絶対消さないように、と。慌ててファイルを幾つかコピーした挙句に、あまりにも嬉しくて万斉に向かって送りつけたのだ。


結果的に言うなら、それは正解だった。
次の日、正気に戻った土方に見つかって、携帯ごと葬られそうになったからだ。本体だけは何とか死守したものの、「愛してる、シンスケ」はコピーファイルも全て、完膚なきまでに消去された。
今、高杉の携帯に設定されている「愛してる、シンスケ」は、万斉からこっそりと送り返してもらったシロモノだ。バレた時用に、万斉と武市の携帯にもファイルを送信しておいたから、これで暫くは安心だ。
心置きなく「愛してる、シンスケ」を電話がかかる度に聞くことが出来て、そのたびに、悶絶している。


そんな風に、土方にだって幸せを噛み締めて欲しいと思うのだ。
土方は恥ずかしがり屋で、余り感情を素直に表に出さないところがある。世間ではコレをツンデレというらしい、と。高杉は最近知った。部下情報だ。万斉に言わせれば、土方はツンデレではなく、単純に高杉に関わっている暇が無いだけだと辛らつに言うのだが、高杉自身は、新しく覚えたこの「ツンデレ」を大いに推奨したい。きっと、その通りなのだ。
恥ずかしくて、素直になれなくて、ツンデレ、なのだ。だから、高杉の声を着信メロディに設定することも、愛してる、のメールに返信してくることも、無い。

けれど、これならば、土方の「ツンデレ」な自尊心を傷つけることもなく、幸せを与えてやれるのではないか、と。高杉は思わず緩んだ口元を、きゅ、と引き締めた。
土方が自分に電話してきて、けれどその電話を取ってやれない時に。恥ずかしがり屋で意地っ張りで、何度も電話を掛けられない、あいつの為に。

 


『高杉だ。十四郎か?そうだよな、そうに違ェねェ。十四郎以外なら今すぐ切れ。気ィ向いたら電話してやるから。で、だ。十四郎、悪ィな。お前ェの電話に出られねェなんて、俺としたことが不覚も良いところだ。だが仕方ねェよな、こういう時もあるからよ。けど心配すんじゃねェよ、俺ァ何時だってお前ェの事忘れたりしねェし、ずっとお前ェを想ってる。だから、そんな泣きそうな顔、してんじゃねェよ。手に取るようにわかるぜェ。直ぐにかけ直すからよォ、ほんの少し、待っててくれや。あァ、メッセージを入れられるらしい。俺に伝えてェ事があるんだろ?挨拶は、「愛してる」から始めろよ。くくっ。と、そろそろ時間か。なら、直ぐに、逢おうぜェ、十四郎。愛してんよ――』

ぴー。

 

――

相変わらず残念なシンスケさん。

 

 


 

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