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いっこ下のシンスケくん編からどうぞ。

今回はトウシロウさんも残念です。







 



 

どうでも良いから、だれかアイツを斬れ。

 


シークレット・マイハニー4

 


ここ数日、高杉からしつこくメールが来る。何時もしつこいのだが、それまでの比ではない。ボックスが飽和し、大切なメールが消えていってしまうものだから、いい加減鬱陶しくなっていた土方は、嘆息しながら、一つの番号あてに、電話をかけた。
いいと言ったのに、勝手に登録した高杉の電話番号だ。

もう一度自分達の立場を思い知らしめてやりたい。警察に毎日メールを送ってくるテロリストって何だ。そんな暇があるならちゃんと立派にテロをしてみせろとも思うのだが、そんなことをされた日には此方の仕事が増えるだけだ。

なら自分も江戸の平和に貢献しているのではないか、と。最近土方はとみに思うようになった。高杉一派は、良くも悪くも、「あの」高杉に心酔しているらしい。恐ろしいことだ。
鬼兵隊の行く末がちらりと気になったりもするのだが、潰れてくればそれはそれで、土方としては問題ない。

だがやはりそうも行かないのだろう。小さく嘆息して、土方は随分と長いコール音を待った。
鬼兵隊が動く、という情報が幕府を通じて真選組に降りてきたのは昨日の事だ。直接かかわっているわけではないらしいのだが、高杉も他の幹部達も、江戸へ来る可能性が高いらしい。

何をするつもりだ、とか、俺が相手になってやる、だとかそんなことを言うつもりは毛頭無かった。勿論、愛してる、も心配している、もだ。

迷惑だやめろ死ね。

ぶつ、という音がして相手が出た、と思った瞬間に、土方は間髪入れずにそう言った。
本当はもっとたくさん言ってやりたい事があったのだけれど。

けれど、電話の向こうから聞こえた高杉の声は、妙に浮かれていて、辛らつな台詞を吐いた本人としては、拍子抜けするほどであった。

『高杉だ、十四郎か?そうだよな――』

浮かれたその言葉から始まった声は、制止する土方の声も空しくどんどんと流れていく。
「いい加減人の話聞けよ!」
噛み合わない会話や、一方的キャッチボールは日常茶飯事だものだから。

だから、土方は最後に、ピー、という電子音が流れるまでそれが留守番電話のメッセージで、高杉が自分で録音したものだ、という事に気が付かなかったのだ。

 


そうして、気が付いてみればこれほど恥ずかしいことも無い。
不特定多数の、少なくとも高杉に電話をかけるほぼすべての人間がコレを聞くことになるのだという事を、わかってやったのだろうか、と。
握り締めた携帯を凝視しながら、土方は目を見開いた。

 

「前々から阿呆だとは思ってたが、此処まで可哀想だとは……」
取り合えず反射的に電源を落として。
さてどうしたものか、と土方は困ったように眉を顰めた。次から次へと、よくも余計な真似をしてくれるものだ。


高杉と逢った次の日に、土方は屯所へ行く前に必ず携帯をチェックする。待ちうけがテロリストの笑顔、だとか、着メロがテロリストの愛のメッセージ、だとかは当たり前で、凝っている時には気づきにくいアラーム音だとか、メール着信画面だとかが変えられている時もある。
最早小規模なテロだ、と。流石テロリストだと妙に関心しながらも、迷惑極まりない。

 

本当なら、高杉の携帯も存在ごと抹殺してやりたいと、土方は何時も思うのだ。壁紙は一日三度の割合で自分の顔が順番に変えられているらしいし、勿論着信画像なんかも、そうらしい。
着信メロディはこの間だ、酔わされた勢いで、愛してる、などと吹き込まされたらしく、舌っ足らずな自分の声が、高杉の携帯から流れるたびに、刀を抜いて斬りかかるという事を続けているのだけれど。
妙なところで昔取った杵柄、というよりも現役の腕を発揮して、何時も止められてしまうのだ。
桂あたりが爆破してくれないものかと、こっそりと思っている。

大体部下も部下だ。
アイツをカリスマだと思っているというのだから、世の中恐ろしい。盗撮のカリスマだとは思うが、アレをテロリストの親玉だと慕っている部下達が、段々と可哀想になってくる。
敵であるはずのテロリストたちに同情しかけたところで、土方は、大きくため息をついた。

 


とにかく、あの留守電のメッセージを何とかしないことには、夜も安心して眠れない。安眠を返せ。

高杉に電話して怒鳴りつけてやってもいいのだが、またあのメッセージを聞くかもしれないと思うと、それも困る。嫌だ。

「ちきしょうあの野郎一回死ね」
一回どころと言わず。

そうそうに留守番電話のお姉さんに帰ってきて欲しいものだ。あの無機質な声が癒されるなどとこれほど思ったことは無い。

そうして土方ははたと思いついたのだ。
目には目を、歯には歯を。
あのテロリストは相当な馬鹿だから、きっと自分がどれだけ怒っているのかわかっていないのだ。馬鹿な上にポジティブなんて、扱いづらいにも程がある。

「思い知らせてやらァ・・・・・・」

半ばぶち壊れた思考の中で、土方は薄暗くその口元を吊り上げて笑った。


『――此方マヨラ13。土方十四郎?ああ、アイツならどっかのテロリストがあんまりウゼェから、マヨの国に帰っちまいやがってたぜ。今頃幸せに暮らしてンだろうな。さて、この電話にかけてきたってェこたァ俺への依頼ってェ事でイイんだな?もちろん、包帯テロリストの抹殺を真っ先に請け負うぜ!てめェの名前と用件を発信音の後三十秒以内で言え。じゃァな――』

 

ぴー。

 


――
彼だって必死なんです。
左だって必死なんです。


 

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