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デレ高土。
金魚に負ける男。

それだけの話です。

相変わらずデレデレです。




ちくしょう面白くない。
そうぽつりと呟いて、高杉は冬空の下、真夜中の公園で上着も着ずにぽつりと佇んでいた。
きィきィと揺れるブランコをがつりと蹴り飛ばして。面白くない。


劣等者とみずいろ金魚

 

秋祭りの時に土方がすくって来て、一匹だけ生き残った金魚は、一回り大きくなった。広い水槽で一匹ゆるゆると泳ぎながら、時折こつこつとガラスに頭をぶつけて餌をねだる。

高杉は、単純にその金魚を、「金魚」と呼んでいる。
「オイ、金魚、メシだ」
そう言って何時もぱらぱらと餌を巻いてやるのだ。
土方は、律儀にマヨ子と呼んでいる。自分で付けた名だからか、それとも自分の好物だからだろうか。時折、美味そうな目でマヨ子をみているので、その金魚に高杉は同情を隠せない。
そんな時は、冷蔵庫からそっと徳用マヨネーズを出してきて、土方に握らせてやるのだ。

マヨ子はマヨ子だからマヨネーズが好きかもしれねェ。
そう言って、水槽にマヨネーズを注ごうとした時は、流石に高杉が身体を張って止めた。
「いや、金魚はマヨ食わねェだろ流石に」
「わかんねェだろ。マヨ食ったらもっとでっかくなって、鯉みてェになるかもしれねェじゃねェか」
「金魚と鯉は根本的に違うんだよ!マヨ食っても鯉にはならねェの!」
その時は必死で推し留めたのだが、今でも時折、マヨネーズと水槽を見比べてるいるものだから。そのうち黄色い奴になったらどうしよう、と。高杉はぽつりとため息を吐くのだ。

 

水換えや餌やりは土方と高杉が二人で協力しあっていて。こうしてると同居してるみたいだ、なんてこそりとその耳に流し込んでやれば、もう似た様なモンだろう、と。そんな風に言うものだから。
たまらなくなってその場で押し倒したのだ。
抗議するようにぴしゃりと金魚が跳ねる音がした。

それをちらりと聞きつけて、高杉が軽く舌打ちする。
「晋助?」
「何でもねェ」
そう言って、土方の黒い髪をかき上げて。その額に軽く口付けた。

「それ、だけかよ、てめェ」
くすぐったそうに一瞬肩をすくめたのだけれど、直ぐにその黒い瞳がじろりと眇められて。
「不満かァ?」
「たりめーだ」
ぐ、と後頭部を引き寄せられて、土方が至近距離で笑う。そのままゆっくりと、どちらともなく口付け合った。

 


くた、と布団の上で半分眠っている土方に、薄く笑って、その身体に服を着せてやる。この季節、暖房はあっても、流石に裸のままで眠るのは寒い。
自分も適当な服を羽織って、喉が渇いたという土方に、待ってろ、とそう言って、寝台から立ち上がった。
確かスポーツドリンクが冷蔵庫に買ってあった筈だ。運動、するからとごっそり買い込んであるのだ。
情事後の、この奇妙に暖かい雰囲気が好きだ。
起き上がれない土方に、そうっと口移しで飲ませるのも、それに不貞腐れて、そっぽを向いた土方も。

そうして、振り返ったら土方が金魚と戯れていた。
水の中に指を突っ込んで、ぱしゃぱしゃとかき回している。その指先に戯れるように、金魚がその尾をひらりひらりと揺らしていた。

「何、してンだ?」
ペットボトルを持ったまま近づくと、振り向きもしないまま、土方が水の中でその指をじっと止めた。
「遊んでる。おもしれェんだぜ」
ほら、と。
土方の指に絡まるように尾がなびいて。
その指の腹を、金魚がついばむ様に突付いた。

「金魚ってこんなふうに懐くもんなんだなァ」

その言葉が、酷く嬉しそうに聞こえて。
土方の視線が水面を舞うひらひらとした金魚に一心に注がれているものだから、ほんの少し、悔しかったのかもしれない。
土方に対してはとても狭量だが、その割に余裕もしっかりと備えているので、何時もならそのくらい別になんとも思ったりしない。
相手は金魚だ。人間ですらない。

けれど、情事の後の、心置きなく一番、独占できるはずの時間を奪われたような気がして。


高杉は、不機嫌にその水槽を睨み付けた。
土方の指に絡まる金魚がちらり、と此方を見た、気がする。その光の無い瞳がくるりと動いて。

「土方、ンなの放っとけよ」
苛々とそう言うのだけれど、土方の興味は金魚から離れない。
「いいから、晋助もやってみろって。すげェ、可愛い」
「可愛くねェよ」
「いいだろ、ほら」
無理やり手を掴まれて。オイ、と思ったときには、水槽に手を突っ込んでいた。
土方はといえば随分と楽しそうで。
突っ込まれた高杉の手に金魚が纏わりついて、ひらりひらりと泳ぐのを楽しそうに眺めていた。

「もうイイだろ、十四郎」
金魚だのなんだのより、この甘い時間をもっとゆっくり、二人で過ごしたい。
それは土方も同じはずで。
だから、空いた手で土方の身体を抱きこんでやって。
「なァ・・・」
どんな声で囁けば、その腰が砕けるか知っている。
「晋、助」

もう一回、と。こそりと吹き込んだ途端に。


水槽につけたままの指を。かぷり、と金魚に齧られた。
歯があるわけではないから痛くはないのだけれど。何事か抗議するようにかぷりかぷりと噛み付かれれば腹も立つ。

「しつけェな・・・」
苛々と水槽から手を抜いた時には、既に土方はその手の内にいなくて。
興味深そうに水槽を覗き込んでは、良いなァ、と呟いていた。
「俺も遊びてェ・・・」

晋助ばっかりずりィんだよ、と。そう不貞腐れた声が聞こえた瞬間に。

「なら、好きにしろよ。好きなだけソイツと遊んでろ!」

自分でも大人気ないと思う。
けれど。
この時間だけは、大切で大切で、仕方のない時間なんだ。
誰にも譲れない、時間なんだ。

 

気が付いたら部屋を飛び出していた。
薄いシャツにズボンで、上着も着ずに来たものだから、寒くて仕方ない。けれど、家に戻る気にはどうしてもなれなくて。
高杉は公園でぽつり、と。一人、ブランコの傍で立ちすくんでいた。きぃ、きぃ、と不気味に揺れる。
夏には外であれやこれやとカップルが煩い夜の公園だけれど。この時期には、たった一人、高杉だけだった。

ラブラブと楽しそうなカップルはあれど、金魚にコイビトをとられた男はそうそういないだろう、と。半ば自嘲の笑みすら浮かべつつ、高杉は空いているベンチでひとりくたりとうなだれた。ちきしょう幸せそうにしやがって。


ふいに口をついて出そうになった言葉を飲み込んで。高杉は俯いたまま目の前の地面を蹴り付けた。
なんだ金魚に負けるって。
いや負けてねェ。

けれど。
どうしても、生き物でもそうじゃなくても。
何にも獲られたくないものが、自分にはあるんだ、と。零れそうになった熱い何かをぐっと堪えて、高杉はゆっくりと息を吐いた。

どうしてこんなに、夢中になってしまったのかわからないのだけれど。
あの階段で、初めて出合った時に、そうして自分の、胡散臭い言葉で言えば、運命とやらが、決まってしまったに違いないのだ。


「晋助!」


だから、焦ったように走ってくるその姿を遠くにみとめて。高杉はふ、とベンチから腰を浮かせた。
自分と同じように、寒そうな格好で掛けてくる。
随分と無理をさせてしまったから、腰だって痛いに違いない。けれど、土方は、高杉を見つけると、ほっと安堵の表情を浮かべて、薄っすらと笑ったのだ。


「馬鹿、だろてめェ!」
突然、出て行きやがって。

は、と息を整えながら、高杉の襟首を掴み上げる。

「大人気ないにも程があるだろ、金魚、なんかに・・・」
「るせェ。金魚だろうがなんだろうが、気安く身体許してんじゃねェ」
「身体って、馬鹿だろオマエ指一本じゃねェか!」

そうして、つい、と土方が困ったように俯いた。

「お前は、それ以外、全部好きなように、してんだろっ!」
それで何が不満だと。半ばヤケになってそう叫ぶ土方に。
途端に機嫌の良くなった高杉は、つ、と口元を吊り上げて。

こうして、転がされるように落ちていくのだ。

だいすきだと全身で言われて。
不機嫌でいられるほど、自分は格好よくない。

それでいい。

 

その肩にかける上着も持っていないのだから。
早く帰って、温めてやろう、と。その腰に手を回して引き寄せると、高杉はく、と喉の多くで笑いを零した。

 

――
金魚に負ける男を書きたかっただけです

 

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