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2007.10.08 Mon 21:54:11
祭ですくってきた金魚が一匹だけちゃんと生き残った記念。
嬉しい。
例に漏れずキモイ高土。
「悪ィけど今日は部活で、行くんだ」
申し訳なさそうに、そして少し哀しそうにそう言って、土方は近藤たちと連れ立って、秋祭へ繰り出してしまったのだ。五日間の日程で開かれる秋祭に、もう土方と高杉は嫌というほど二人で遊びに行っていたから、別段祭に行けないという事自体はなんという事も無いのだが。自分でなく他の人間と行くという事に腹が立つ。
「勝手にしろよ・・・」
そう言って、ふいと背中を向けてしまったから。
そのあと土方がどんな顔をしていたかは知らないけれど。
それからずっと、夕食もそこそこにふて寝していたのだ。明日になればきっと自分の隣に戻っていると思うのに、今日のその一瞬に苛々と乱れる。
遠くに聞こえる祭の喧騒に耳を塞いで、高杉は、それでもメールの一本でもあるのではないかと携帯を握り締めながら、何時の間にかうとうとと瞼を落としていた。
もうすぐ日が変わるという頃に。一人不貞腐れたように布団にもぐっていた高杉は、部屋の扉が叩かれる音にふと目を覚ました。
眉を顰めて、身動きしないようそっと息をひそめる。
誰かは知らないが、こんな時間にはた迷惑極まりない。ふざけた友人たちであれば、完全に無視するつもりで。高杉はじっと眼を閉じた。
「――すけ、晋助」
叩かれている扉の向こう側から、零れ出るように声が聞こえる。
その声を聞いた途端、高杉は布団を跳ね上げて、玄関まで走った。
親以外で、自分の名前を呼ぶのはあいつだけだ。そして、その声を、聞き間違えるはずが無い。
鍵を開けるのももどかしく、夜中だというのに全く気遣うこともなく、高杉は乱暴に扉を押し開けた。
「十四郎」
「よォ・・・」
気まずそうに視線を逸らせて、土方はそう呟いた。紺の浴衣に、柄の入った帯を腰で締めている。からりと涼しげに鳴る下駄からは、裸足の足が見えていた。
「――っオマエ浴衣で行きやがったのか!」
近所迷惑もいいところだ。大声で叫んだ高杉は、土方の腕を引っつかむとそのままなかへ 引きずりこんだ。
「近藤は!沖田は!?」
「・・・んだよ、一人だよ」
「何処から!」
「神社から」
あっさりとそう言った土方に、ほっと脱力した高杉はじろりと、その瞳を睨み付けた。
「俺もいねェのに、浴衣なんぞで出歩くな」
肌蹴るな、足を出すな、もっと帯をきちんと締めろ、と。立て続けに叫んで、高杉は俯いた土方の肩をそっと抱えた。
「今日は来ねェと思ってたぜ・・・」
「高杉がすげェ機嫌悪そうだったからな、来るつもりも無かったんだが・・・」
そこで困ったように言葉を切って、土方は高杉の眼前にそっと手を掲げて見せた。
赤い紐に吊られたビニールの袋の中で、赤と黒と、それぞれ二匹ずつ。
ひらり、ひらりと、ひれが揺らめく。
「金魚・・・?」
眉根を寄せて、高杉はじっとそのビニール袋を覗き込んだ。
「すくうつもりも無かったんだけど、よ・・・」
苦笑して頬を掻いて、土方もひらりと泳ぐ金魚をじっと見つめた。
「総悟と勝負してたら、本気んなっちまって・・・・・・」
「馬鹿、オマエ屋台の金魚なんて・・・」
すぐ死んじまうぞ、と。そう言えば、解っている、と。土方は困ったように目を伏せた。
取り合えず風呂場から洗面器を持ってきて、そこに水ごと金魚を入れた。レンジで常温にもどしたミネラルウォーターを継ぎ足して、ほっと一息つく。
「で、どうすんだよ、コレ・・・」
泊まっていくつもりなのか――大歓迎だが――、土方は浴衣からシャツに着替えている所で、脱いだ浴衣をたたんで、部屋の隅に積んでいた。さすがに 浴衣は持って帰るつもりらしい。
「晋助んちで飼えねェ・・・かな」
「オマエんとこは駄目なのか?」
「・・・だって俺ァ自分ちより晋助んちの方がいる時多いじゃねェか」
差し当たって、その一言で高杉の機嫌は完全に回復したと見て間違い無い。じっと床の洗面器を覗き込んでいる土方を、背後から抱き込んで。くく、と喉の奥で笑った。
「明日までコイツらが生きてたら、水槽とか買いに行こうぜ」
そう言って、顔を輝かせた土方の唇に、そっと口付けを落としたのだ。
そのまま抱き合って、散々にいじめて啼かせて。意識を飛ばすように眠りについた土方を抱きこむようにして、高杉も瞼を落としたのだ。明日が祭の最終日で、きっと一緒に行こうと、睦言の中で約束させて。
水音を聞いたような気がして。
意識を浮上させた高杉は、腕の中の温もりが消えていることに気がついて、そっと身体を起こした。敷布はまだ暖かいから、土方が起き上がってからそう時間も経っていないのだろう。
外はまだ暗いままで、時計を見れば三時半を少し過ぎたところだった。
「十四郎」
暗闇に向かって問いかける。
壁のスイッチに手を伸ばして灯をつけると、洗面器の傍でしゃがみこんでいた土方がはっと此方を見たところだった。
「どうした?」
寝台から降りて、手近にあったシャツを土方の身体にかける。もう秋口だ、夜は冷え込むことも多い。
土方の肩越しに洗面器を覗き込んで、高杉は小さく、溜息を一つ、零した。
「死んじまった・・・」
ぽつり。
そう呟いて、土方は水面に腹を上にして浮いていた一匹を、ゆるりとすくい上げた。赤い色をしていた。
「一匹しか、残ってねェや・・・」
黒い色の、尾びれが長い金魚が一匹、洗面器の底を掠めるようにして、ひそりと佇んでいる。上に浮かんだ三引きの仲間を一瞥することもなく。ひそり、と。
それでも大分弱っているようで、力なくはくはくと口を開け閉めしていた。
「明日んなったらちゃんとしたの買ってやろうぜ、一匹、残ってる」
くたりと力なく横たわった赤が二匹、黒が一匹。掌にのせて、土方はそっと息を吐いた。
「埋めてやろうぜ、コイツら」
空いた手でじっと、高杉の服の袖を掴む。その手を取って、握り締めて。高杉は笑って頷いた。
一匹残った黒の金魚は、何だかんだと朝まで二人で工夫したためか、それとも元々強かったのか、無事に朝まで生き延びた。
朝一番に空いたばかりの店に飛び込んで買ってきた水槽セットに移し変えてやると、黒い透き通るような尾びれを振って、ゆるりと水を切って泳ぎだす。
それを見て、土方はほっと息を吐いた。
「名前、決めたのか?」
ぼんやりとブルーに照らされる水槽を眺めながら、高杉がそっと問うた。
「”コンドーサン”。絶対ェ強く育つぜ!」
「いやだ」
じろりと土方を睨みつけて、高杉は不機嫌そうにこつこつと水槽のガラスを叩く。ひらりと尾びれを返して、金魚がじっとこちらを見ているような、気がした。
「じゃァ”ソウゴ”」
「Sになるじゃねェか」
「”ヤマザキ”」
「犬になるだろ・・・」
「”ギンパチ”」
「糖尿になる」
もっとマシな名前考えろよ、と。呆れたようにそう言った高杉をじろりと睨みつけて、土方は暫く考え込むように、じっと水槽に目をこらした。
「じゃァ・・・マヨ子」
「・・・は?」
「本名はマヨネーズ子な」
「メスなのか・・・?」
「オスならマヨ男」
もう何も言わないと、そっと心に誓った高杉は、マヨ子だかマヨ男だか、なにやら可哀想な名前を付けられそうになっている金魚に、同情をこめてそっと哀れみの視線を投げかけたのだった。
――
うちのコは「うどん子」です。「うどん粉」じゃないです。「うどん子」です。うどんが好きだからです(左が)
このあとマヨ子は順調に育ち、ちょっとした鯉くらいになるんだと思います。
シンスケとはライバルで、時々トウシロウを取り合って水槽の中と外でにらみ合ってたりするわけです。
金魚に負ける男、シンスケ。
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