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バーガーじゃないです。
雨降らなかったら月見ネタやろうぜ、とか決めてたんで。
頑張って古代モエに挑戦。平安くらいで、貴族シンスケとちょっと身分の低い貴族トウシロウ、みたいな。

ツンデレまで気が回らなかったので(何それ)若干キモチワルイ高土仕様に・・・若干どころかシンスケがトウシロウを構い倒し杉てなんかアレな感じなので。
残念なシンスケとか可哀想なトウシロウとかが駄目だという方はそのまま何も無かった振りをしておいてください。


とにかく残念です。



広い泉に、舟が一艘静かに浮いていた。ゆるりと波紋を描きながら、滑るように進んでいく。

「また豪勢だな、晋助」
呆れたように着物の袖を刷り合わせて、土方は溜息と共にそう呟いた。朱塗りの橋の上、丁度舟がするりと下を通り抜ける。橋の反対側へ身体を向けて、土方は舟に独り乗った男を見下ろした。
「共も付けずに舟遊びか?」
「――お前こそ、武官の一人も付けずに此処まで来たのか、十四郎」
見上げた男は、黒髪で隠れていない方の、鋭い独眼を眇めて、不機嫌そうに橋を見上げた。
「襲われたら如何すんだ」
「何にだよ。妖でも出るってか?」
馬鹿にしたように鼻を鳴らせた十四郎をじろりと睨めつけて、高杉は橋の傍らの岸辺にゆっくりと舟を寄せた。それに倣って、土方も沓を鳴らせて橋を下る。綺麗に整えられた庭の木は、夏の間に瑞々しく葉を伸ばしたようで、岸辺には零れ出るように緑が茂っていた。

「この月で酔った野郎どもが、てめェを狙ってるってんだよ」
「馬鹿かお前は」
舟から岸に軽々と飛び移って、酒を舟に置いたまま、高杉は茂った葉を手で退けながら土方の元へ歩み寄った。
「お前・・・幾ら邸内だからって小袖はねェだろ・・・」
舟から下りた高杉を見て、土方がきゅっと眉を顰めた。それも白ではなく、派手に染め上げられている。邸内とはいえ誰が尋ねてくるかも知れぬというのに。
「似合うだろ、仕立てさせた。邸ん中まであんな暑苦しい格好してられねェよ」
確かに、赤く染め上げられた小袖は、高杉のその僅かに赤みがかった髪によく映える。鋭い瞳にも、宙に浮かぶ、金色の月にもだ。
そこだけが浮き上がって見えるような気さえして、土方はす、と高杉から視線を外した。
「大体十四郎、てめェこそ何だって束帯なんざ着てやがる」
「――っオマエ・・・!」
危うく掴みかかりそうになって、土方は自分が正装だという事に気がついて、はっとその手を止めた。これで足でも踏み外して泉に落ちでもしてしまえば、明日から出仕できなくなる。

土方の家は貴族の端に辛うじて留まっているような、そんな家だった。家系自体はその血筋を皇家にまで残すほどであるが、此処十数年で目に見えて没落していった。
邸だけはずっとその場に住んでいるが、それも何時まで続くか解らない。使用人も最低限しかおらず、束帯もこれ一そろいしかないのだ。

「――左大臣さまがお怒りだ」
吐き出した息と共にそう言って、土方は高杉の袖をぎゅっと握った。
「オマエを呼んで来いと言われた」
「観月宴か」
忘れていた、とさらりと言って、高杉はそっと土方の腰を抱いて邸内へといざなう。身軽な自分とは違って、束帯の土方はあちこちに引っかかって歩き難そうだ。さり気なく抱く手を強めては、こそり、と、至福の笑みを浮かべるのだ。
「宮中行事くらいちゃんと出仕しろよ」
「イイんだよ、あんな中で観るより独り舟遊びでもしながらの方が、よほど綺麗だ」
「月が綺麗かどうかじゃねェんだよ」
解ってるだろ、と。そう言って、土方はふと周囲に視線を走らせた。
「人払いはしてある、気にすんな」
「そうか」
ふ、と笑んで、土方は沓を脱ぎ捨てると、砂利を踏んですのこへ上がった。すぐ目の前は高杉の寝所で、言葉どおり付き従う使いの者もいないようだ。
「本当に誰も居ねェし・・・」
「十四郎が来るっつったら大人しく引っ込んでったよ」
自分がこの家でどういう捉えられかたをしているのか、少しではなく心配になる土方だ。北との艶事の時でさえ、付き人が几帳を挟んで向こう側にいるということだって、珍しくないのだから。

言ってみれば、高杉の家はそういう家だった。土方の家系など歯牙にもかけない、皇家の一つだ。父が隠居して高杉が跡目を継いだのが数年前、未だその地位が貶められることは無い。
だからといって高杉自身がきちりとしているかと言えばそうでもなく、定時に出仕もせず宮中の行事にも殆ど顔を出さない。暇があれば邸を抜け出しては市へ酒を買いに行くというのだから、使用人の苦労話を聞くたびに、土方は深く、同情を禁じえない。

「――それでも、左大臣様はオマエを追い落とそうとしてる。気づいてんだろ、晋助」
几帳の向こうで何かごそごそとやっている高杉に向かって、土方はそう言った。
ふわり、と几帳が揺れて、向こう側から高杉が顔を出す。土方の前に膝をついて、そうして、その唇にそっと口付けた。観月宴で振舞われた酒の香りが、まだ残っている。流石の宮中行事だ、良い酒を出す。
「俺が邪魔なんだろうさ」
薄く笑って、高杉は土方の首もとの紐を解いて、内の襟をくつろげた。一瞬土方の身体がひくりと動いたけれど、今更隠しても仕方がないと思っているのだろう。
口元に、笑みさえ浮かべて。
「――昨日か?」
高杉の問いに、ゆるりと頷いた。
赤い跡が幾つも、花のように散っている。

最近宮中で頭角を現してきた左大臣家は、何かというと高杉に水を向けてくる。
それくらいで落ちるような家柄ではないが、かといって、土方との艶事に口を出せるほど、相手の身分は低くも無い。
土方となれば尚更で。最近は小姓のように、出仕すればずっと左大臣の傍に付き従っていると聞いた。

「俺を呼びつけたのも、見せ付けてェわけだ、あの狸が」
小さく舌打ちすると、高杉は持っていた着物をばさりと土方の前に投げ出した。

「月見だ、十四郎、着替えろ。お前の為に仕立てさせた」
だから、今日は行くな。
そう言って、高杉は着物を押し付けたまま、そっと土方の身体に腕を回したのだ。
「言いつけ通り俺の邸に行こうとして、途中で妖にでも遭ったと言えばいい。物忌みで三日くらいは休みだろう」
「無茶苦茶だなオイ・・・」
「左大臣も物忌みなら何も言えねェよ。こっちから伝えさせる、存分に、見せ付けてやろうや」
「・・・それは三日間泊まれということか・・・?」
「満月も良いが、欠けていく月ってェのも良い酒が飲める」

そう言って、高杉は土方の腕に押し付けた着物をばさりと開いた。一度大きく波打って、零れるように裾が滑っていく。
「――っつか袿じゃねェか!」
噛み付くように叫んで、土方はかくりと肩を落とした。表に薄い灰、裏に青をあしらった紫苑の袿を嬉しそうに掲げて、高杉は訝し気な眼を土方に向けた。
「当たり前じゃねェか。束帯なんで艶のねェ服着てんじゃねェよ、脱げ」
「無茶言うんじゃねェよ!」
「どうせ宴の席でべたべた触らせたんだろうが、そんなモン何時までも着てんな!」
引き剥がすように衣を脱がせると、小袖の上から満足気に紫苑の袿を羽織らせる。黒髪によく映えるその色に、やはり自分の見立ては正しかった、と、高杉は薄く笑った。

散った胸の跡に口付けて、上から赤を塗り重ねていく。
その度に跳ねる身体を押さえつけて、高杉は土方をそっと床へ横たえた。
「っ、てめ、こんなとこで!」
寝所はすぐ傍だ。せめて、とその袖に縋れば、高杉はにィ、と意地悪く笑った。
「折角こんな名月なんだ、勿体無ェよ」
「は、ふざけんな!」
「イイじゃねェの、お前はゆっくり観月してろよ、十四郎」
耳元で、低く囁く。それだけで甘い声が零れ落ちて、高杉は満足そうに小さく喉を鳴らせた。
指をそっと這わせて、身体中についた跡に忌々しそうに舌打ちする。
「四十も過ぎた狸が、嬉しそうにお前の上で腰振ってんのかよ」
「・・・るせ、ェ」
顔を背けて、泣きそうにそう呟くものだから。
高杉は着せたばかりの紫苑の袿を剥ぎ取って、その下にあらわになった身体にゆっくりと身を沈めていった。


月は既に天頂まで昇っている。
薄っすらと眼を明けた土方は、自分の身体に回る暖かい腕の感覚を確認して、ほっと息を吐いた。丁寧に折りたたまれていた小袖と袿をぼんやりとした頭で眺めて、少し躊躇ったあと、紫苑の袿に手を伸ばす。何も着ていないままの身体に一枚、それだけを羽織って、土方はそっと高杉の腕から抜け出した。
すのこに腰掛けて、ぼんやりと上を見上げる。

「今更、月見か?」
「観ろっつったのは晋助だろ」
ごそごそと起き出して来る高杉に憮然とした言葉をぶつけて、やがて隣に並んだその腕に、土方はそっと身体を預けた。

「――眩しくて、いやになるな」
薄い笑いを唇に佩いて、土方がぽつりとそう言った。じっと天上を見つめたまま、瞬きすら、せずに。
「いつも真っ暗だったら、いい」
「そうか」
「何も、見えねェから」

暗闇の中なら、存分にその腕を取ることも、できように。

雲ひとつ無い夜の空は、遮るものの無いように月の光を貫き通す。
眩しいな、と。
ひとつ唇に乗せて、土方はゆっくりと眼を閉じた。
どうせ自分は物忌みらしい。朝一番で内裏に走らなければいけない高杉家の使いのものにそっと心の内で謝罪しておく。
それでも、この心地よさには逆らえないのだ。

うとうとと瞼を落とした土方をそっと抱きかかえて、高杉はふ、と頭の上に浮かぶ月を見上げた。太陽ほど明るくは無いが、夜道を歩く灯は必要ないだろう。
「これで暗闇だったら――」
土方の頬に触れるだけの口付けを重ねて。

お前も、見えなくなっちまう――




――
左大臣を誰にしようか悩んだ結果、結局決まらずそのままという・・・。銀さんとか坂本とかかなー・・・。左大臣銀さんと没落貴族トウシロウっていうのもモエる。

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