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お互いがお互いを(略)キモチワルイ高土その三。
銀八先生苦労話。
散々言ったんであれですが……ほんと、あれです、スイマセン。
ヤバいと思った方は逃げてください。
では…
昼休み後の五時間目は、眠たいものと決まっている。
「……土方君」
呼ばれて、うとうとしていた土方ははっと顔を上げた。目の前に担任が、微妙な笑顔で立っている。
銀色のくるくると巻いた髪に、やる気の無い目。銀八はチョーク片手に深々と溜息をついた。
「君たちの仲がいいのは解るけど、二人そろって居眠りってのはアレだ、先生が切ない」
「……あー…スイマセン…」
二人で教科書を見ていたからだろう、高杉と二人、互いにもたれあうようにして居眠りしていたらしい。もう何時ものことだから、と。クラスの皆は見て見ぬふりを決め込んでいた。
「取り合えず、高杉起こしといて」
「あ、はい」
適当に返事を返して、土方は隣で気持ち良さそうに眠っている高杉の肩を揺らした。居眠りどころではなく、最早爆睡だ。これで成績は別に悪くないというのだから、何処か腑に落ちないものがある。
「晋助、起きろって」
「…あー…十四郎…?」
「銀八が煩ェから」
「いや、授業中だから、一応」
呆れように呟いて、銀八はかくりと肩を落としながら黒板の前へ戻った。
とにかく何とかしてくれと、他の教師から幾度も言われている。話を聞かないのでもなく、不真面目なのでもなく、けれどある意味あの二人は職員室中が頭を抱えるほどの問題児だ。
土方は部活面でも勉強面でも優秀であるし、高杉も、隻眼やあの鋭い目つきに似合わず意外と大人しい。
――高杉が大人しいのは土方がいるからですよ。
教師の一人がそう言っていた。
土方と出会う前の高杉は、手の付けられないほどであった、と。まず学校へは来ないし、すぐに喧嘩を売られる。それを買うものだから、学校間の問題になったこともしばしばあった。
それが、土方と出会ってから、土方が学校に来る日は皆勤賞だ。というか、二人そろってでないと学校に来ないのだから、片方が休めばもう片方も出てこない。
けれど、高杉自身も落ち着き、周りに友人も増え、良い傾向ではないか、と職員室ではほっと安堵していたところだったのだ。
けれど、何事も行きすぎは良くない。
あの土方だから、と笑って二人の行動を見ていた教師達が段々と眉を顰めだした頃には、既に二人は学校中の噂になるほどに、互いに互いを抱え込んでしまったのだ。
今のところ表立った問題は出ていないけれど、教師の胃には大ダメージだ。
「高杉も土方君も、後で職員室な…」
この際だから適当に話でもしようか、と。不真面目な自分にしてはまともな事を考えていると、銀八はこっそり嘆息した。
「土方です」
「……高杉だ」
職員室で甘くいれたコーヒーを飲んでいたところに、高杉と土方は連れ立ってやって来た。職員室が僅かにざわめく。
「取り合えず、座って」
パーテーションで区切られた一角の、ソファをすすめて、銀八はさてどうしようかと首を捻った。
取り合えず向かい側に腰を下ろす。
「…あのさ、土方君と高杉って家近い…のか?」
「俺の家の向かいが晋助のアパートですけど」
な、と土方がくるりと横を向く。その手はしっかりと高杉の袖を掴んでいて、高杉の手は当たり前のように土方の腰に回っていた。
「…いやもう良いけどさ、今更だけどさ…」
ああもう、と肩を落とした銀八は、残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
「取り合えず、学校でいちゃこらすんの止めろ、お前ら。目に毒だから。モテない男子とかが可哀想だろ、なっ」
同意を促すと、高杉も土方も怪訝な顔で互いに視線をあわせる。
「……先生?」
ややあって、土方がおずおずと切り出した。
「何、土方君」
「俺たち別に……そんな、何か…そういうの、してねェと思うんですけど…」
「は?」
思わず、眉を顰めて問い返す。
「だから、別に俺ら目立ったことしてねェってんだろ」
不機嫌そうに高杉が応えた。
ならその腰に回ってる手とか、袖掴んでる手とか、ていうか密着してんじゃねぇよ、と。思わず大人気なく叫びたくなる。
「…学校でどれが普通なら…家で何してんの…?」
ふと、問うてみる。
土方の顔が僅かに赤くなったのは、どうやら気のせいではないらしい。
「…そりゃァ…家とかでは…あれだけど、ちょっとくれェ……なんだ…」
「家だったら好きなだけ十四郎さわり放題だし、抱いてっし、いろいろしてるけどよ、学校では全然じゃねェか」
「んなこと学校でされてたまるか!」
思わず声が裏返る。
駄目だ、根本的になんか駄目だ…っ
もう常識とかそういう問題じゃない…
「…っでも学校でオカシイことしてねェし…」
「つかその状態が十分オカシイから!その手!高杉おめェどこ触ってんだよ!」
「腰」
さらりと言ってのけて、高杉は当たり前のように土方をぎゅっと引き寄せた。
「ああそうかい…」
良くこれでクラスの連中も耐えているものだ。
「なら土方くんと高杉にとっては普通なんだな、これがっ」
立ち上がって土方の隣にどさりと腰を下ろす。高杉の手を払いのけるようにして、土方の腰を抱いて、自分の方に引き寄せた。
「――っ晋助…!」
一瞬ののち、土方がびくりと肩を跳ね上げて、銀八の手を払い落とす。
「てめェ銀八…っ!」
土方を引き寄せて自分の後ろに庇うと、高杉はぎっと銀八を睨み付けた。
「ほら怒るだろ、普通じゃないだろ!」
そういいながら、柔らかくて抱き心地が良かったなぁと、ちょっと思ってみる。
「うるせェ、十四郎に俺以外が触るなんざ許さねェぞ!」
背筋が寒くなるような台詞を吐いて、高杉は土方の手を引っ張って職員室から駆け出て行った。
手を引かれながら、土方が赤い顔をしながら晋助、と呟いている。
ああもう好きにすればいいじゃん…。
職員室の中に言いようの無い沈黙が広がって、やがて一様に溜息が流れ出した。
そして今日も、教室の隅を見ながら、銀八は段々悲鳴を上げ始めてきた自分の胃を思うのだった。
もう既に俺たちの世界的高土ですね。
銀八とか完全無視っていうか……あんたら家でなにしてんのさ…