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可哀想な高杉とつれない土方が携帯を持ったらこうなるっていう話のその3の高杉編。


高土つか土高つか。
スイマセン。






何の奇跡かと思った。

 

シークレット・マイハニー

03

 

 

おれもあいしてる


まいはにーなんて登録したメールアドレスから、奇跡のような返事が返ってきて。高杉は、京の隠れ家で一人、煙管を口に銜えたまま硬直していた。包帯で隠されていないほうの目は画面を凝視したままで、ちりちりと煙草の葉が香る。

見間違いかと思った。

あの重度の照れ屋で、返信があるときでさえ、「馬鹿」だの「死ね」だの。照れていると解っているからそれなりに可愛いと思えてしまうのだが、これが自分と土方でなければ完全に嫌われているとしか思えないだろう。


そんな土方が。「あいしている」!


寒いだろうから温めてやろうと、もぐりこんでは追い出され、それでもめげずに押し倒しては叩き出され。
それでも、自分を好きで好きで仕方の無い土方が、照れているからだ、なんて可愛いんだ、と涙をのんで、寒い縁側でいく夜過ごしたことだろう。


そんな土方が。「あいしている」!

 

雪でも雹でも槍でも何でも降ればいい。
幸せだ。


直ぐに返信しようと、ようやっと慣れてきた手つきで、高杉はかちかちとボタンを弄って。跳んでいった電波を追いかけるように、その心はふわりふわりと空に舞い上がったままだ。

何時も一日に一度、返事が来れば良いほうであるのに、今日は随分と返信が早い。
最近高杉は、コンビニとやらで簡易充電器を手に入れた。勿論、万斎に買いに行かせたのだが。
これで、徹夜で会合でも、充電器を忘れても、テロの為に待機していても、何時でも土方と連絡が取れる。

それをかちりと充電部分にはめ込んで、臨戦態勢だ。

 

ほんとうに?

 

そうして返って来たその文字の向こうに、不安で揺れる土方の瞳が見えるようで。高杉ははっとして、浮かれていた気持ちを引き締めた。
自分の、愛情表現が足りなかったのだろうか。不安に、させてしまったのだろうか。
そうだ。
土方が自分から「あいしてる」なんて。言い出すなんてよっぽどでは無いのか。
きっと何かあったに違いないのだ。
江戸で一人、不安で不安で、そうして、どうしようもなくなって出てきた言葉が「あいしてる」であったなら。

高杉は、ぎゅ、と赤い携帯を胸に抱きこんだ。

「土方ァ・・・」
一人置いていってすまないと、何時も思う。ずっと傍にいてやりたいのだ。この腕に抱きこんで離したくない。
けれど、そうもいかないのだから。

土方には相当な不安を押し付けているに違いないのだ。
例えば自分が怪我をしていないか。浮気なんてしていないか。
土方がいるのに浮気などするはずもないのだけれど、そうやって疑われるというのは少し心地よいものでもある。

だから。大丈夫だ、と。そう伝えるために。
毎日毎日、あいの言葉を、文字で囁き続けるのだ。


だから、高杉は今度は不安でたまらなかった。土方に何があったのだろうか。誰かに虐められたとか、酷い怪我をして不安がっているとか。
幕府のお偉い方に何か言われたのかもしれないし、真選組内で騒動でも起こったのかも知れない。

けれど、「あいしてる」なんて。土方が確かめたがっているのだから、それはきっと、とてつもないことなのだ。


ほんとうにきまってる


ぎこちなく送り返したそのメールにも、直ぐに返信が来た。
その頃には、高杉は既に京と飛び出してしまっている。電車で一人がたごとと揺られながら、今回ばかりはこんな便利なものを作った天人に感謝だ。土方と自分の距離が、少なくとも時間だけは縮まるのだから。


あいしてる。
あいしてるから。
だいすきだ。


そんな、奇跡としか言い様が無いメールを暫くやり取りして。高杉はどうにもたまらなくなってきた。
携帯の向こう側、未だ離れている江戸で、きゅっと眉を寄せて部屋の隅で携帯を握っている土方の

姿が見えた、気がしたからだ。
寂しいのだろうか。
辛いのだろうか。

そう思ったら、この腕に抱きこんで、あいを囁いて。
そうして何もかも忘れてしまえ、と。甘く甘く抱いてやりたくなったのだ。

 

繋がりたい。

 

ぐちゃぐちゃに愛して、感じさせて、そうして艶やかに啼く声を聞きたい。
そうしたらきっと、あんなに、寂しい顔はしないはずだから。

 

そうしたら、文が化学変化を起こして返って来た。
それは壮絶な変化で、試験管も吹っ飛びそうなくらいだった。寧ろ高杉の思考が吹っ飛んだ。

 

抱きたい。

 

誰をだ。
暫く画面を凝視して、そうして、現実逃避に窓の外を少し眺めてみる。穏やかに川の上を通っているところで、眼下を川魚を採るのだろうか、猟師の舟が一隻、ゆるりと流れていった。

高杉は、一応自分は上だと思っていた。押し倒すほうで、突っ込むほうで、「イイだろ?」とか「身体は正直だなァ?」とか意地悪に囁いてみたりする方だと信じて疑わなかった。
確かに背は土方の方が高いし、体つきもそう変わらないのだから、逆でと言われれば出来るのかもしれない。けれど、何時も土方が、自分の下で艶っぽく声を上げる、そんな風に、自分ができるとも思わなかったし、考えるとぞっとする。
ぶわ、と自分の腕に鳥肌が立ったのを感じて、高杉は、ごん、と窓に頭を預けた。

けれど、これは土方からの初めてのお誘いだ。
形はどうあれ、というかどういう結果を求めているのであれ、お誘いはお誘いだ。
「たかすぎ・・・シテ?」というのが、「たかすぎ、シテやるよ」に変わっただけの話なのだが、その差異は自分のプライドとこれからの人生に大きすぎるほど関わってくる気もする。


「いや、待て」
落ち着け自分。
まだ京までは時間がある。よく考えろ。下手に答えを出すと、何だか笑えないことになってしまう。今でも既に笑えない。

どうする。
いやどうするも何も、頷くわけにはいかない。確かに男同士、どちらでも対応できるとはいえ、ここは絶対に譲るべき一線ではない。此処で負けたら大きな何かを失いそうな気がする。

ここは出来るだけ、男らしく断るべきだ。焦って首を振るような醜態は晒せない。より、すたいりっしゅに、格好よくいくのが最善の手だ。

 

乗られんのも悪かないけどな、やっぱ乗りてぇ

 

必死で考えた結果、取り合えずこんなものだろう、と。ぽちりと送信ボタンを押しておいた。

 

いややっぱり抱きたい

 

中々科学変化は頑固なようだ。
頭を押し付けた窓が割れそうだ。土方はこんなに頑固だったろうか。いや、自分の考えを、何があっても貫く男だ。
けれど、そんな土方が、一番最初のその時に。酷く抵抗して、罵られて、終わったあとに散々殴られたけれど、それでも抱かれてくれたのだから。
それでいいのか、と、思っていたのだ。

だが、考えを改めなければいけないかもしれない。
土方が愛されるより愛したい派だったらどうしよう。
勿論自分は、何があっても愛してやると決めているし、土方がその場所に甘んじてくれれば良いと思っていたのだけれど。

もし土方が、本当に自分を愛したいというなら。愛してくれるというのなら。

一度くらい、自分も、流されてみてもいいかもしれない、と。
疲れきってぼんやりとした頭でそう結論付けて、高杉はぱちりと二つ折りの携帯の画面を開いた。
こんなとき、どう言えば良いのかは知っている。土方は、最初の時に言ってはくれなかったけれど。

自分は、愛されてやらなければいけないのだから。

 

やさしく、してくれ。

 

 

――
スイマセンごめんなさい。
考えすぎでどうしようもなくなった挙句一番駄目な方向へ転がったシンスケの話。

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