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携帯をもったシンスケくんが可哀想なくらい哀れな話。
延々とシンスケがボケ続ける話です。
サイト内で一番報われないシンスケがいます。
ごめんなさい。
高杉編
送ったはずのメールが帰ってくる。
どうしてだ・・・?
シークレット・マイハニー
02
先ほどから、送ったメールが延々と帰ってくる。携帯の小さな画面を凝視しながら、高杉は不安気に眉を寄せていた。
高杉が土方のメールアドレスを知ったのは、ごく最近のことだ。
自分がテロ活動で余り土方に構ってやれないものだから、せめて連絡だけは、と思って、赤い携帯を買ったのだ。
メールでは土方を温めてやれないし、電話では抱きしめてやれない。
けれど、少なくとも、愛している、という事実を土方が不安がらないように、ずっと送り続けてやることは出来る。
高杉が癒してやろうと思って設定した「あいしてる」のメールの着信メロディは、次に会った時には無機質な電子音に取って代わられていた。
けれど、それは、土方が重度のテレ屋であるということを考慮しなかった自分が悪いのだ、と。高杉は素直に反省した。
それはそうだろう。
自分だって、土方の「あいしている」なんて囁く声が、携帯の録音とはいえ、他人の前で流れるかと思うと、ハラワタが煮えくり返って蒸発しそうになる。
そんな土方の奥ゆかしい気持ちを考えてやれなかった自分が悪いのだ。ごめんな、土方。
だから、高杉は携帯のボイス録音の制限精一杯まで詰め込んだ愛の言葉を、添付で送ってやった。
着メロに設定しなくてもいい。
ただ、自分がそばにいてやれなくて、一人で寂しい時に、ほんの少しでも慰めになれたら、と思うのだ。
そのメールを最後に、一通も、届かなくなった。
青ざめた顔で、高杉はうろうろと、京での隠れ家の一つの中を徘徊していた。京には見回組がいる。最近江戸の真選組にライバル意識でも芽生えたのか、急に過激派の取締りが厳しくなった。土方が造り上げた組織をライバル視するなどおこがましいにも程が在る。
「っ、ちきしょう、どうしやがったんだ・・・」
土方から返事が返ってこないのは何時ものことだ。仕事が忙しいのだろうし、態々返さなくても、愛は伝わっているだろうという土方なりの愛情表現だ、と高杉は受け取っている。
だが、此方からのメールが届かないというのは初めてだ。
どうやら、受信拒否設定をされてしまっているらしい。
「まさかバレたんじゃねェだろうな・・・」
一応此方はテロリストで、あちらは真選組の副長だ。
誰かにこのメールが見つかれば、それで終わってしまう。
けれど、送ったメールには自分の名前を書いたことは無いし、土方とてまさか本名で登録しているというわけではないだろう。
よほど感の鋭いヤツがいたのか。
それとも、テロリスト同士の抗争にでも巻き込まれているのかもしれない。
は、とその事実に思い当たって、高杉は見つめ続けていた携帯画面から顔を上げた。目がちかちかして、首の後ろが痛い。
もしかしたら、土方は、江戸に居る別のテロ組織に拉致されてしまったのではないだろうか。
「アイツ、俺の為に・・・」
自分に火の粉が飛ばないように、慌ててメールの受信拒否を設定したに違いない。何が起こるかわからない、絶体絶命の状況である可能性が高い。
そう考えれば辻褄は合う。
探偵でも食べていけそうだ。
「くそ、俺の土方を・・・!」
今すぐ江戸へ戻らなければ。
攘夷派とて一枚岩というわけでは勿論無い。桂を中心とした穏健派と高杉を中心とした過激派が大きく占めているが、そこから零れ落ちた小さな組織もごろごろと江戸や京に転がっていた。
そんなところから小さく爆ぜた火の粉が、土方に降りかかるなんて。
「冗談じゃねェぞ」
赤いちりめんの携帯をぎゅっと握り締めて、高杉は隠れ家から飛び出すと、笠も被らずに駅まで走り続けた。
京と江戸との、この距離がもどかしい。
だいじょうぶか!
届かないとは解っていても、送り続けた。
帰ってくるメールを何度も何度も根気良く。
おれのために、なんて。そんなばかげた自己犠牲なんてくそくらえだ。
「馬鹿野郎・・・」
何時でも、助けてやるのに。
真っ暗な部屋で、鎖に繋がれて。シンスケ、と呼ばれたことの無い名前が土方の口から零れ落ちる。きっと、絶対助けて、なんて言わないのだ。一人で耐えぬいてしまうだろう。
けれど、それでは駄目だ。
何の為に、おれがいる。
「待ってろ、土方!」
江戸に着いた直後、突然メールが届くようになった。
だいじょうぶか!
どうした土方!
「いま、助けてやるからな!」
取り合えず、情報が第一だ。じっとよく監察してみれば、何時もより走り回っている真選組の人数が多い、気がする。頻繁にパトカーが走っているのを見かける、気がする。
やはり皆土方を探しているに違いない。
真選組より、誰より早く助けに行って。
そうして、別に頼んだわけじゃねェよ、と。顔を背けながら、土方はきっとそう呟くのだ。それでも一瞬震えた体が、自分の袖口をしっかり掴んでいるのを想像する。
本当は怖かった、なんて。絶対に口にしないだろうけれど、そんな風にされたら、抱きしめたくなるだろう。
屯所に乗り込んで情報を集めるのが先決だろう、と。高杉は、真選組屯所への路をひたすらに走り
続けた。もう何度も何度も通ったから、道順は完璧だ。重要機密であろう内部の構造さえ、頭の中に思い浮かべることが出来る。愛ゆえだ。
無我夢中で走っていたら、人を轢いた。黒い着流しの塊だ。
「っ、土方!」
どうしたのだろうか、こんなところで。
もしかしたらもう助け出されてしまったのかもしれない。
いやそれならそれで構わないのだが・・・。
「大丈夫か!?怪我は!?ヤられたりとかしてねェだろうな!」
ぎゅ、とその背に手を回して、抱きしめる。
ふる、と土方の身体が一瞬震えた。やはり、怖かったのだろうか。自力で逃げて来たのだろう。遅れてごめんな。
「離せ・・・」
そんなことを言うけれど、きっと本当は怖くて怖くて仕方がないはずなのだ。だから、安心しろ、と。声には出さなくても、きっとこの抱きしめる腕の強さで解るはずだ。
大丈夫だ、おれがいるから。
「心配、した」
でももう大丈夫だから。
だから、そんなに泣きそうな顔、するなよ。
――
一人でシリアスってるシンスケ。
段々哀れになってきた。
ほぼ私信
続きを、と言ってくださった某さまに勝手に捧げますスイマセンありがとうございます!
でも「監禁」のシンスケくんとかホント好きなので、もう愛しちゃってるくらいなので(キモイ)
寧ろ続き待ってます(死
スイマセンスイマセン・・・。