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まったく何も考えず行き当たりばったりで書けるとても楽な話(死

高土です。
携帯のメールアドレスを交換したらこうなっちゃうんだというそんな感じの話。

土方編


どうやらこれはメル友というらしい。
テロリストとメル友って何だそれ。


シークレット・マイハニー

02


「・・・近藤さん、アンタ確か、万屋の志村姉が好きだったな」
「大好きだ!」
振り返って言い切った近藤をちらりと見て、心の底からため息を吐き出した土方は自分の携帯をちらり、と一瞥した。

「アンタストーカーだもんな」
「違うぞトシ!俺ァお妙さんへの愛ゆえに、この押さえきもちを行動で示し尚且つお妙さんに何かあった場合直ぐにその御身を守れるように、常に影から付き添っているに過ぎない」
「要するにストーカーなわけだ」

この一点さえ除けば、近藤は本当に良い男である。少なくとも土方はそう思っている。
だが上司はストーカーだった。
ストーカーの心理はストーカーに聞けばわかるに違いない。

「なァ、アンタ志村姉のメールアドレス知ってるか?」
「一応教えてもらったんだ!一回も返って来たことないけど。それでも俺は、この愛をお妙さんが何

時でも確認できるように、毎日朝昼晩とちゃんとメールを送っている」
胸を張る近藤に、それは好都合だ、と呟いて。
土方は、ひょい、と自分の握っていた携帯を見せた。

「あのな、もし志村姉にメールの拒否設定されたら、アンタ落ち込んでもうメールすんの止めよう

とか反省すっか?」
「お妙さんがそんなことするはずない!何かあったと思って迷わずお妙さんの所へ走るぞ俺は!愛の為だからな!」

そうか、やはり、失敗だったらしい。
今朝以来沈黙したままの携帯をじっと見つめて、土方は机の上に突っ伏した。

この分だと、アイツもやってくるだろう。
そう遠からず。


毎日毎日、朝昼晩どころか一時間毎にテロリストからメールが届く。犯行声明や脅迫文ならマニュアルがある。まず相手の組織と人数を明らかにすること。そして、出来ることなら主要な人物の名前まで聞きだせるなら尚良い。そうして、できるだけ神経を逆なでしないようにより多くの情報を引き出し、一斉確保へつなげる。
マニュアルを作ったのは土方自身だ。何度も吟味し、近藤や監察方、隊士たちとも相談を繰り返した。
けれど。
テロリストから愛を語られた場合の対処方法なんて、何処にも作っていなかったのである。
組織名は鬼兵隊、人数は一人。あんなの一人で十分だ。名前は、高杉晋助。今をときめく大テロリストだ。

一通も返事を返していないというのに、毎日しつこく届くメールにいい加減嫌になって、土方は今朝、携帯の取扱説明書をひっぱりだして、高杉からのメールの受信拒否を設定した。
一番最後に来たのは、長ったらしい文章と(殆ど読まなかった)、一本の添付だった。録音のボイスのようで。
とても嫌な予感がしたから、聞かずに置いておこうと思ったら、メールを一番下までスクロールすると、勝手にファイルが開いて流れ出した。
メールの設定など、買ってから一度も弄っていないから、自動で開く設定になっていたのだろうか。


あいしている。ずっとあいしている。おれがいなくてさみしいとはおもうけれど、おまえはつつしみぶかさをもって、ちゃんと、るすをまもらなければいけない――


メールごと消去した。
新種のウイルスだったらどうしよう。

 

それからずっと、携帯は静かだ。
沖田から嫌がらせのメールが一通と、隊士たちからの定時連絡のメール、レンタルビデオ屋からの

メルマガが一通。
随分と穏やかだ。受信拒否ってすばらしい。

でもそういった穏やかさは、嵐の前の静けさだと相場は決まっている。嵐の前ならまだ幾分マシだが、それが実は巨大地震だった、となると笑えない。

本当に、笑えない。

ストーカーの心はストーカーが一番よく知っている。
どうやら、受信拒否は逆効果だったようだ。
京都から、大災害が近づいている。


受信拒否を解除したとたんに、大量のメールが飛び込んできた。どうやら、ずっと送り続けていたらしい。
いい加減にしろと思わないでもないのだが、受信ボックスに未読のチェックが付くのがイマイチ気に食わないのだ。だから、律儀に全て目を通している。

だいじょうぶか
どうした、土方!
いま助けてやるからな!

高杉の中でどんな物語が展開されているのか土方には理解しかねるところだが、どうにもこうにも、災害は防ぎようが無かったようだ。
さっき来たメールで、江戸についた、と。そう言っていた。
時間からして、もうそろそろ着いているに違いない。

「近藤さん、俺、きょう早退してもイイか・・・?」
これから地震が来るんだ。それもとびきりでかいのが。自分だけが、何故か酷く被害を受ける。
「あ?書類はもう終わったから構わねェけど、珍しいな、トシが早退なんて」
「ははは」

笑いって便利だ。好きなだけ誤魔化せる。


急いで着替えて、屯所から走り出て。

できるだけ仕事場から離れたい。私宅に戻ろうと、直ぐ傍の角を曲がった瞬間、猛スピードで走っ

てくる赤っぽい紫っぽい物体に轢かれた。
人間の全力疾走は道路交通法違反ではないので、取り合えず一言注意するだけに留めておこう、と。土方が苛々と顔を上げると、大災害がそこにいた。

赤と紫のその物体は、同じような赤い携帯を握った高杉晋助だった。

「っ、土方!」
「あー・・・」
ギリギリ路地裏でよかったとか、このあとどうしよう、とか。色々思うことはあったのだけれど。
取り合えず飛びついてきた高杉に、土方はぐったりと頭を抱えながら。ふるり、とその背を寒気が走った。
「離せ・・・」
取り合えず正等な主張を申し述べてみるものの、そんな気配は全くうかがえない。それどころか、

抱きしめる腕にはどんどん力が込められているようで。苦しい。

「心配、した」
そんな泣きそうな声で言われても。寧ろ自分が泣きそうだ。
とにかく、その腕を引き剥がすことから初めて。
そうして土方は、受信拒否の言い訳を、今更ながらに考え始めるのだ。


――
ウザイシンスケ。

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