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恥ずかしいタイトルで恥ずかしい話を書いてみたかった。
恥ずかしい。
高土で、甘いというよりは馬鹿でキチクというよりは阿呆です(死
トウシロウさん編。
高杉からメールアドレスをもらった。
凶悪テロリストのメアドをどうしろというのだろうか、と、土方は幾分眉を顰めながら、先ほどからずっとアドレス帳とにらみ合っている。
高杉と土方がアドレスを交換し合うまでには様々な紆余曲折があり、その上土方としては別に欲しくもなかったのだ。
何時ものように真夜中に家に押しかけてきたテロリストは、寝ている土方の布団を引っぺがして、叩き切ってやろうかと刀を抜きかけた瞬間に、何かを目の前に突きつけてきたのだ。刀ごと押さえ込まれてぼんやりとしていた自分も悪かった。
それは赤かった。今流行のちりめん柄というやつで、テレビも見れると話題の、携帯電話だった。
過激派テロリストと携帯もどうかと思ったのだか、攘夷も今やモバイルの時代らしい。
半分寝ぼけながらぼんやりと見ていると、高杉は覚束ない指先で幾度か画面を操作して、携帯についている小さなカメラを土方に向けた。
「っつか何してんだコラァ!」
ようやく我に返った土方が高杉の腕を引っつかんだときには、寝起きでうつらうつらしていた自分の顔が待ちうけに設定されていて。
土方はそのまま、布団に突っ伏して深く深くため息を吐いた。
おかしいだろう。何で攘夷志士の携帯開けたら待ち受けが真選組の副長なんだ。しかも寝起き。
「ちょ、消せや!」
「るせェ、絶対ェヤだね」
子どものようににやり、と笑って。高杉は待ちうけを一通りじっと眺めた後、満足げにぱちりと携帯を閉じた。
「死ね、頼む今死んでくれ…」
つか誰かに見られたらどうすんだ、と。そう問えば、自慢する、と当たり前のように、そんな答えが返ってきて。これが全部夢なら良いのに、と。そのまま不貞腐れたように布団にもぐりこんで、寝てしまったのだ。
それが間違いだった。一生の不覚だ。大体テロリストが枕元にセッティングされているのに、寝るか自分、と。昨夜の自分の危機察知能力に抗議したい。
しかも酷い夢を見た。高杉に何枚も何枚も携帯で写真を撮られて、それを嬉しそうに見せてくる夢だ。しかも愛している愛しているとしつこく言い続けてくる。トラウマだ。
とにかく、寝てしまったのがいけなかった。
それが、この結果だ。
携帯には見たことも無いアドレスから、メールが届いていた。
百通くらい、届いていた。
『これおれのあどれすだからとうろくしとけよ』
ご丁寧に、高杉晋助、と書名つきだ。馬鹿だ。
『起きたか?早く起きろよ!』
『愛してるぜ!』
『オメェもだろ?』
『こんどデートしような』
以下、延々と高杉からのメールが受信ボックスに蓄積されている。それも、メール機能の成長を表すかのように、最初の方は使えなかった「。」や「、」が使えるようになっていたり、最後の方には顔文字までが添えられていて、一晩で大分頑張ったようだ。
馬鹿だ。
頭の中で隻眼の黒ヤギさんが踊る。ジンギスカンにして食ってやる。羊だけれど。
「…白ヤギさんたら読まずに食べたー……」
虚ろな瞳で来たメールを片端から消去していく。
一通り消してほう、と一息ついていたら、画面が光ってメールの通知を告げた。舌打ちして、また消してやろうと身構えていたら、受信完了の画面と共に、携帯が喋った。
愛してるぜ
それも、あのテロリストの声で。
「っの、ヤロウ…!キモチワりィことしてんじゃねェ!!」
単純な機械音だったはずの着信メロディは、気づかないことが多い為に何回かの繰り返しに設定してある。
愛してるぜ
愛してるぜ
愛してるぜ
愛してるぜ
死にたくなってきた。
次に高杉が来たら、携帯の着信を「死の着信メロディ」に変えてやろうと固く決意して。
取り合えず、土方はたった今来たばかりのメールを開いた。
『愛してるぜ、登録したか?』
誰か助けてくれ。
テロリストから毎分メールが届くんだ、とストーカーの上司に相談してみようか。ストーカーの気持ちがわかるかもしれない。
とにかく、登録してその旨をメールで送らなければ、この嫌がらせは収まりそうにない。
そう思って、土方はかちかちとアドレス帳を開いて。
そこで、はた、と気がついたのだ。
「名前、どうすんだ……」
まさか高杉晋助と入れるわけにはいかないだろう。誰かに見られたらそれで終わりだ。
ならシンスケ、と名前だけ入れてみるか。
「……いや待て、それすげェ仲イイみてェじゃねェ…?」
名前だけで、なんて。何処かの恋人同士ではあるまいし。
メールが来る度に、自分の精神と胃が侵食されていきそうだ。
「タカスギ、とか…じゃァなかったらいっそテロリスト、で登録して冗談だと思わせておくか…」
そう考えている間にも引っ切り無しにメールは届く。
愛してるぜ
愛してるぜ
愛してるぜ
先にこの鬱陶しい着メロを変えるべきだ。
何時も、傍らに、あの男が居る気分になるではないか。
そんなの、御免だ。
ぽつりと、そう呟いて。
仕方が無いから、アドレス帳には登録しなかった。
その代わり、メールボックスの一番下にロックフォルダを一つ作って。
そのフォルダにメールが来るたびに、ため息を吐く日々が続いている。
――
ごめんなさいごめんなさい。